「撚糸(ねんし)」とは、糸に撚り(より)をかけること、または撚りをかけた糸のことです。「撚る(よる)」とはねじりあわせること。”腕によりをかける”、”よりを戻す”などの言葉も、この「撚り」からきています。
撚り(縒りとも書きます)は日常会話の中で使われていますが、「糸の撚り」を語源として出てきた言葉です。
皆さんは、糸に撚りがかかっていることをご存知でしょうか?糸をねじりあわせると言われても、ピンとこないかも知れません。
しかし糸に撚りをかけることは、糸にとっても、その糸を使って作られる繊維製品にとっても、大変重要な役割を果たしています。
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工 程 |
業 種 |
川上 |
糸の製造 |
原糸メーカー、製紙工場 |
原糸輸入 |
商社 |
↓ 川中 ↓ |
糸の加工 |
撚糸業、仮より業 整経業、サイジング業 |
織り、編み |
織物製造業 編物製造業 |
染色 |
染色整理業 |
縫製 |
縫製業 |
川下 |
卸売 |
商社、問屋、アパレル |
小売 |
デパート、洋服屋、呉服点 |
製品の輸出 |
デパート、洋服屋、呉服点 |
私たちの身の周りにある繊維製品、例えば、今、皆さんが着ている服や、窓に掛かっているカーテン、テーブルクロス、布団やシーツなど、家の中にあるものだけでも、数えあげればキリがありません。その他にも、カーシート、エアバッグ、テント、ハングライダー、ウインドサーフィン、傘など、様々なものに繊維製品(布)が使われています。私たちの暮らしは繊維製品がなければ成り立たないのです。
そういった繊維製品は、一番最初の糸の製造の段階から、様々な工程を経て皆さんが手にする製品となります。繊維産業の川上、川中、川下という言葉をご存知の方もいらっしゃるかも知れません。
糸の製造を川上部門、糸加工、生地の製造、縫製を川中部門、製品流通を川下部門と分けています。
撚糸は川上部門の後、川中部門の最初に位置する糸加工という工程です。川上部門で製造された原糸(生糸)を受け取り、糸を引きそろえて撚りをかけて、次の工程である生地(織物や編物)の製造へ渡します。
では、なぜ糸に撚りをかけるのでしょう?
例えば、蚕からとれる生糸の場合、繭からほぐし出した糸はとても細く、そのままでは糸としては使えません。何本かを束にしないといけないのですが、ばらばらになって扱いにくくなります。この生糸の束に軽く撚りをかけると、丈夫な一本の糸として使えるようになります。
もともと撚糸はこのような簡単な目的のためにおこなわれたのですが、撚りをかける回数(撚糸の単位は、1メートルあたり糸が何回転したかで表します。)を変えたり、太さの異なる2本の糸を撚りあわせたり、一度撚りをかけた糸を何本かそろえて逆方向に回転させて一本の糸にしたり、いろいろな工夫をしているうちに、その糸で作られる生地の風あいや肌ざわり、丈夫さなどがまったく違ってくるという効果がでてきたのです。
現在では技術の進歩により、多種多様な撚糸が行われており、糸に様々な表情をつけています。また合成繊維では従来になかった新しい繊維(原糸)がどんどん開発され、それに対応する新しい撚糸方法が絶えず研究されています。 撚糸加工には蓄積された高い技術力と、新しいものに対する素早い適応能力が必要なのです。